2008年 07月 26日
撮影レポート2
うだるような暑さの昼下がり、駅改札で金丸氏と待ち合わせた。(以後丸氏)
今日は2回目の撮影ボランティア。

もう「暑い」しか言えない・・どうやらワタシは暑さに弱いみたいだ。
丸氏はピチピチしてる。その爽やかさに腹が立つくらいだ。
彼はワタシの写真の師匠。仕事の合間をぬって来てくれた心強い味方。
今回丸氏から「私も撮影行くよ」との志願を受けて2人でカメラ小僧。

預かりさんのKAORIさんとは初対面だ。
以前からたくさんの熱い依頼メールを頂いていた。
そして今回撮影するワンについて、詳しく詳しくメールで語ってくれていた。
KAORIさんは今までに60頭あまりのワンを里親さんに引き渡してきた、大ベテランさんだ。
今までに里親が決まらなかったコはいないという。

それって、すごいことだと思う。

3人で合流した。
まず犬たちの説明、そして『預かりさん』の全てについて
惜しまず語ってくれた。いろんな意味で、打ちのめされる内容だった。
今ここで書くとえらい長いことになるので別の機会にし、とりあえず先へ進む。

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その部屋に、KAORIさんの預かっているワンは全部で5匹いた。
うち一匹は、元預りワンで、KAORIさんのコになったので厳密に言うと4匹か。
あまたある部屋の中のひとつをワンの為にあてがっていた。
なんと、フードやトイレシーツ代は預かりさんたち皆、負担しているとのこと。
驚いた。

ナナ→心優しいビーグルちゃん
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ゴマ→知人から個人的に託された カニヘンサイズのMダックス
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キアラ→里親募集中のワン オス やんちゃな盛り
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ソフィー→同上 キアラの兄妹ワン メス 超癒し系
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↑photo by MARU


りんご→里親募集中の成犬 超ビビリ 
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↑photo by MARU


最初部屋に入ったら、てんやわんやのお祭り騒ぎだったので、何やら状況が分からなかったが
りんごは話に聞いていた通り、ケージの奥のすみっこのすみっこで硬直していた。
ケージの壁に溶け込むんじゃないかと思うくらいにすみっこにへばりついて。

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目を合わせないよう、姿勢を低くし、他のワンを撮り始める。
空気に慣れてもらうまでは、近づいてはいけない。目も合わせてはいけない。
敵意がないですよ、と示すためだ。

子犬達の話をしよう。
キアラとソフィー。

千葉のどこかの海岸近くを、ある犬が放浪していた。
汚れ具合、痩せ具合から、彼女は1年以上放浪していたと推測される。

その犬は身重だった。とある人が保護した翌日に、出産した。

千葉わんにレスキュー要請があり、母犬とも保護、KAORIさん宅にて子育てが始まった。
母犬はKAORIさんにローズと名づけられた。

ローズという名前は、バラの咲き誇る季節にやってきたからだという。
ステキなネーミングセンスです。
ローズの子犬は5匹。
ローズは重度のフィラリアに罹っていたが今まで人に助けられることなく、
KAORIさん宅で献身的に子犬を育てたという。

ローズの育児の丁寧さ、健気さは、今の若い世代の母親たちに見習ってほしいほど、
だったそうな。。

子犬はすくすく育ち、歯も生え、ローズは乳・子離れの為に別の預かりさんのところへ行った。
フィラリアの病気が重く、さらに献身的な育児から来る疲労か
いつも寝ているくらいだという。
ローズ、よく頑張った。

元気いっぱいのキアラとソフィー。生後2ヶ月。健康体そのもの。
この年齢の子犬というのは、手加減なく甘噛みするものだが
この2匹はきちんと加減を知っていた。しかもトイレ完璧。かしこ!
たくさんの犬と一緒に幼少期を過ごすと、いろいろ学ぶみたいだ。
お互いにじゃれて、痛い思いをし、噛む加減を調節するようになる。

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↑photo by MARU

でもこのコ達、まだ2ヶ月よ、かしこすぎるよ。

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もうね、ふかふかのモフモフでね、やばかった。
一度抱きしめたら離せないくらい気持ちくてかわいくて、そして気立て良し。

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↑photo by MARU


キアラの太い前足がたまんない。
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ソフィーの笑顔に瞬殺。
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↑photo by MARU


もうデレデレでした。
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連れてかえりたーい
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↑photo by MARU


撮ってるうちに気づいたのだが、少しでもりんごエリアに近づくと
あるラインを越えたあたりでビーグルのナナちゃんが飛んできて
何かを訴えてくる。最初は、ナナちゃん超笑顔なだけに「?」だったのだが
徐々に気づいた。自分を楯に、りんごの傍に行かせないように必死なのだ。

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「アタシを見て!」と必死に笑顔をふりまくナナ。
その向こうでこちらを怯えて見つめるリンゴ。



そうか。守ってるんだ・・・・・。


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実はナナ、1年前まではりんご状態だったのだそうだ。
すさんだ目をした、笑わない、人間不信のビーグルだったんだそうだ。
今のナナからは全く想像できない過去だ。
ブリーダーの元で、ただケージに閉じ込められ、子供を産ませる機械として
扱われたナナ。一度も散歩をしたことがないし、愛情を受けたこともない。
死なないよう最低限のワクチンを打たれていただけ。
今は綺麗な皮膚は、ひどい皮膚病でと虫だらけで、大変だったそうだ。

ナナは最初、丸氏には近寄らなかった。
男の人が怖いみたい、何をされたのか・・。
こんなに、笑顔なのに、ナナの心の傷はまだ癒えないのだ。


りんごの方を向いた。
ビクッと体を縮めて震える。
しっぽが丸まり、腹に沿う。
顔が硬直し、とても撮れる表情ではない。

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↑photo by MARU


りんごが届くようになった季節に、このコはKAORIさんの家へやってきた。
だから、りんご、という。これまた、ステキな名前だ。
人の前では絶対にケージから出ない。もちろん散歩なんてとても無理。
KAORIさんにだけは、多少心を許しているらしいが、9ヶ月ここにいて
それだけの進歩なのは非常に心配だ、もちろん本人には劇的な進化だけど。


りんごは、野外の柵に複数の犬と一緒に入れられ
息も絶え絶え、なんとか生き延びてきた。
野ざらしの柵だったから、もちろんフィラリアにかかっていたし、虫も皮膚病も凄かった。
20匹ほど、そうやって放棄され千葉わんも協力し、複数の愛護団体に保護された。

りんごは、悲惨な現場から救済された直後の保護場所で保護犬猫100匹中、
100番目のビビり、だそうだ。。

現場の写真を見せていただいたが、目を覆いたくなるような状況だった。
犬の瞳には、生気は無く、『絶望』が映っていた。


人間の、傲慢な欲、お金儲けの被害者タチだ。
これでは金儲けの商品にならない、と見捨てられ、命そのものを放棄された。
愛情など、受けた事も無く、虐待されて生きてきたのだろう。
人を見ただけですくみ、怯える。

KAORIさんが私たちが写真を撮りやすいようにと
りんごを抱き上げたら、りんごはオシッコをもらしてしまった。

「どうしてこんなにも・・・」丸氏が絶句する。
まわりのコ達が必死になってKAORIさんにすがりついた。
みんな、りんごを心配して「やめてあげて!」と言っていた。


世話をしないなら、いっそのこと逃がしてくれればいい。
話を聞きながら、はらわたがよじれるような怒りを感じた。

水もエサもろくに与えられず、野ざらしで、オリに閉じ込め、
ただ生きさせるなんて、拷問でしかない。死刑より酷い。
人間なら、殺してくれと懇願するか、命を自ら絶つような苦しみだろう。

どうしてそんな人間が大した罰則もなく、のうのうと動物を放棄できる世の中なのか。
理解に苦しむ。


KAORIさん曰く、りんごは、犬は好きみたい、と。
以前、モニターのある家へ預けた時に、発覚したのだが
人間がいないところでは、ケージから出てきて、他のコと遊んでいたらしい。
最近では、たまにKAORIさんが不意打ちでドアを開けると、ナナたちと遊ぶりんごを
数回見たこともあるという。慌ててケージに戻るらしいけど・・笑


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ワタシは気づいていた。
りんごの表情には恐怖こそあれど
「怒り」がない。
ただ、怖いだけなのだ。攻撃性など全く見られないのだ。
不思議だ。

時折、みんなが楽しそうに遊んでいるのを見て、寂しそうな表情すら見せた。
きっと、仲間に入りたいんだ。ニンゲンさえいなければなぁ、って感じだろう。

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9ヶ月、KAORIさんの愛情を受けて少しずつではあるが変わったりんご。

あとは、彼女が心を開くのを待つだけだと思う。
頑なに、静かに、拒んでいるのだ。人間を。

でも、多分、あとちょっとなのだ。
りんごの目を見て、そう感じたのだ。

犬が好きなら、犬がいる家庭の方がいいだろう。
できるだけ、最初は犬達だけにしてあげる時間(いわゆる留守番)を多めに取り
徐々に人間の生活に慣れていけばいい。

あるいは、盾となる仲間を取り除くという視点で考え
マンツーマンで愛情をたっぷり注いでやる方が
心を開くのが早いかもしれない。

どちらにしろ、
無理なく、だけれど。

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ワタシは、ワタシならりんごのこころを開けると確信に近いものを感じた。
でもそれは、みっちりりんごのそばで生活をできたら、の話だ。
あいにく自分の犬でさえ毎日12時間の留守番をさせているため
りんごの心を開ける体力と時間がワタシにはない。
そう思っていたけれど・・・

実は、それはKAORIさんも同じ条件なのだ。
なんと、KAORIさんは普通のOLさん。

毎日9-17時勤務で、犬5匹の世話をしている。
なんと昼休みに家に戻って世話をしたりしている。
決して時間があるから、預りさんをしているわけではない。

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「命」を見捨てることができないから、「命」をつないでいる。
彼女は預かりさんという仕事をこう例えた。

「死にかけているコを預かって、健康のかわいらしい犬らしい最高の姿にして
里親さんにお渡しするっていう、命のバトンタッチをしているの。」

ステキな言葉だなぁー。


KAORIさんは、瞳に強い光を込めて言った。

「りんごは、かわいそうなんかじゃない。
かわいそうだった、だけ
それはもう、昔の話。
これからは、かわいそうじゃない。」 
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by mrmh-ysm | 2008-07-26 14:49 | 撮影ボランティア


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